会議について

INFOCOM 2014 (小林 佑輔)

INFOCOM (IEEE Conference on Computer Communications) は,通信ネットワークにおけるトップ会議であり,2014年は4月27日から5月2日の日程で,カナダのトロントで開催されました.今回は正式な参加人数のアナウンスはありませんでしたが,2013年の会議には750名以上が参加するなど,例年参加人数の多い大規模な会議となっています.論文数も非常に多く,投稿論文数1626本,採択論文数320本,採択率19%,という大規模でレベルの高い会議です.また,参加者,講演者ともに,北米とアジア所属の人が多い印象を受けました.日本からの参加者は10名程度だったと思います.

会議の内容としてはネットワークに関することならば何でも対象としている印象で,理論の話から実際に運用しているシステムに関する話まで幅広い発表がありました.会議は7~8つのセッションが並行して行なわれており,目立ったテーマとしては,クラウドコンピューティング,モバイルコンピューティング,エネルギー効率化,センサーネットワークなどが挙げられます.実証実験込みの発表が多いSIGCOMMなどの他のネットワークの会議と比較すると,INFOCOMは理論よりの論文が多いのが特徴的で,「ネットワークの問題に対して,様々な基準でモデル化して,解析,実験を行う」という内容の論文が多い印象を受けました.INFOCOMのアブストラクトが他の会議と比べてページ数が多い(9ページ)ことも理論よりの論文が多くなっている一因かもしれません.また,各講演の他には,数件の特別講演とポスター発表が行なわれました.

この会議の中で,私は,ネットワークの信頼性に関する研究を“Max-Flow Min-Cut Theorem and Faster Algorithms in a Circular Disk Failure Model” というタイトルで発表しました.本研究はERATO河原林プロジェクトRAの大槻兼資氏との共同研究であり,ネットワーク中に円板領域の損傷が生じるモデルにおいて,ネットワークの耐故障性を効率的に計算するアルゴリズムを与えるものとなっています.

———————————————————————————————————————————————

ICML2014 (相馬 輔)

会議概要
ICML(International Conference on Machine Learning)はNIPSと並ぶ機械学習のトップ会議で,機械学習や最適化における最先端の研究が発表される場として広く知られています.2014年のICMLは6/21〜6/26までの日程で北京で開催されました.総投稿数1248,採択数310(採択率24.8%)であり,ほぼ例年通りの採択率でした.また,国別投稿数はアメリカ55%,イギリス6%,カナダ・イスラエル・スイスが4%,日本・フランス・ドイツ・中国が3%,その他の国が13%でした.また,会議参加者は中国国外から689名,中国国内から524名の合計1213名であったことが,運営側から報告されていました.

会議の雰囲気
ICMLは非常に規模の大きい会議で,部屋は立ち見も珍しくなく,発表に対する質疑も活発に行われていました.今回のICMLでは全ての論文に口頭発表とポスター発表の両方があり,興味を持った口頭発表はポスター発表で直接聞きに行くことができ,とても交流しやすい会議であったように思います.連続最適化・数値計算に基づく手法が多く,私が専門とする離散最適化手法の発表は少ない印象でした.ただ,もう一方の機械学習のトップ会議NIPSでは,離散最適化手法のチュートリアルが2009〜2012年にわたって連続開催されているほか,機械学習の研究者とのディスカッションを通じても離散最適化に対する期待は大きいという印象を受けました.

自身の発表について
私自身は,ERATO河原林プロジェクトの成果である“Optimal Budget Allocation: Theoretical Guarantee and Efficient Algorithm”に関して口頭発表およびポスター発表を行いました.本研究は,機械学習や広告の分野に現れる様々な問題に対し,劣モジュラ関数を利用した統一的なフレームワークと,近似アルゴリズムを与えたものです.

pic3mini pic2mini

pic1mini
———————————————————————————————————————————————

KDD (吉田 悠一)

KDD (ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining)とは知識発見・データマイニングに関する国際会議で、この分野ではトップの会議となっています。今回のKDDは8月24日から27日にかけてニューヨークで開催されます。 論文はResearch TrackとIndustry & Government Trackと呼ばれる二種類のトラックに投稿することができます。後者は企業や政府の持つデータを用いた応用に主眼を置いているので、我々の主戦場は前者のResearch Trackになります。今年のResearch Trackの投稿数は1036件、そのうち151件が採択され、採択率は14.6%でした。その中で本ERATOプロジェクトからは以下の3件が採択となりました。

  • Takanori Maehara, Mitsuru Kusumoto, and Ken-ichi Kawrabayashi: Efficient SimRank Computation via Linearization.
  • Takuya Akiba, Takanori Maehara, and Ken-ichi Kawarabayashi: Network Structural Analysis via Core-Tree-Decomposition.
  • Yuichi Yoshida: Almost Linear-Time Algorithms for Adaptive Betweenness Centrality using Hypergraph Sketches.

私が把握している限りでは日本からの採択は6件で、そのうちの3件が本ERATOからの論文であったことは特筆すべきことだと思います。 Research Trackの論文を眺めてみると以下のような分野からバランスよく論文が選ばれています。

  • 巨大データに対する効率的なアルゴリズムの開発
  • 機械学習・統計手法の開発
  • テキストマイニング・推薦・トレンド検出
  • ウェブマイニング
  • ヘルスケアへの応用
  • セキュリティとプライバシー

特に巨大データに対する効率的なアルゴリズムの開発の割合は思っていたよりも多く(30セッション中9セッション)、これは私自身が貢献できる分野なので、個人的には朗報でした。

———————————————————————————————————————————————

AAAI2014(波多野 大督、大坂 直人)

基本情報AAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)はIJCAIと並ぶ人工知能に関するトップカンファレンスです.そのトピックは機械学習,ゲーム理論,探索,自然言語処理,プランニング,ビジョン,WEBなど多岐にわたります.AAAIは今年で28回目であり,7月27日~31日の5日間開催されました.前2日でワークショップとチュートリアルが,後3日間で本会議が行われました.会場はカナダ,ケベックにあるケベックコンベンションセンターでした.

統計情報
2014年は1406件の論文申込に対して398件の採択で,採択率は28%でした.年々論文申込数が増えており,これからより競争率が高くなることが予想されます.発表は206件の口頭発表,398件のポスター発表があり,このうち9件が日本からの採択論文でした.その他にも2分間で研究の要点のみを発表するPlenary talkが今年から導入され,計40件の発表がありました.口頭発表は15分(12分発表,3分質疑)と比較的短いですが,ポスターは最終日まで展示されているため,いつでも議論可能な状態でした.招待講演,チュートリアル,ワークショップに関しては,それぞれ8件,15件,16件ありました.参加者はオープニングの時点で977人おり,大学関係者に限らず,企業からの参加も多く見受けられました.日本からの参加者は,大阪大学,九州大学,電気通信大学やNTTコミュニケーションズ,IBMなどから約20名の参加がありました.

研究内容等
研究トピックの割合は機械学習が一番多く,次点でゲーム理論という他の人工知能の国際会議と同じ傾向でした.また,理論的な研究も少なくはありませんが,面白い問題を提案して,その解法を提案するというものが多くを占めているように感じられました.AAAIにはEntertainment chairなるものが存在し,Fun and Games NightやSpeed Datingなど様々な催しが行われました.特にSpeed Datingは今年から導入されました.これは,5分ごとに話し相手を変えることで研究者間のネットワークを広げるという画期的な催しものです.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

———————————————————————————————————————————————
SODA2014(岩田 陽一)

基本情報
SODA (ACM-SIAM Symposium on Discrete Algorithms) は離散アルゴリズムに関する理論研究のトップ会議で,今年は1月5日から7日にかけてアメリカのポートランドで開かれました.併設で実験系アルゴリズムのALENEX (Meeting on Algorithm Engineering and Experiments) と組合せ構造解析のANALCO (Meeting on Analytic Algorithmics and Combinatorics) が例年開かれています.理論系のトップ会議には他にSTOCとFOCSがあり,SODAはこれらに比べて計算量理論寄りの話題が減って,アルゴリズム寄りの話題が増えた感じになっています.

統計情報
今年のSODAには489件の投稿があり,131本の論文が採択されました.このうち,河原林ERATO関連からは私の共著論文も含め4本の論文が採択されています.採択率はおよそ27%と他の分野のトップ会議と比較すると高めですが,理論分野ではSTOC・FOCSも含め,会議の難易度と採択率にはあまり相関がないようです.また,ジャンル別の採択率としては,今年は私の専門分野でもあるFPTアルゴリズムが48%と非常に多く採択されていました.

雰囲気など
発表は併設の2会議も含め全て口頭発表で,最大4並列で行われていました.私の発表は同じテーマに関する研究を別のグループの方々も独立に行っていたため,発表枠マージで前半後半半分ずつ話すという変わったスタイルになりました.通常の発表の他に,3件の招待講演があったのですが,ちょうどアメリカの大寒波と重なり,飛行機が飛ばず講演者が間に合わずに順番を入れ替えるなどのトラブルもありました.(私達の帰りの飛行機もその影響で乗継が間に合わず延泊するというトラブルも…)
データベースなどの応用寄りの会議と比べると,スポンサーブースなどもなく,よりアカデミックな感じの会議になっています.二日目の終わりに開かれたビジネスミーティングでは翌々年の開催場所を参加者全員による投票で決めるというのが伝統になっており,2016年の開催場所候補地にはマイアミが選ばれていました.
発表は学生や若い研究者のみならず,教科書にもよく出てくるような大先生のものもあり,チューリング賞受賞者でもあるRobert Tarjan氏による発表も,招待講演ではなく,一般の枠でありました.(発表のみならず,そのセッションの他の全ての発表に対して質問をするというアグレッシブさでした.)

soda_photo1
開催地投票の様子
ワードでその場で書き換える
soda_photo3
間に合わなかった招待講演の言い訳 (部屋が非常に広かったので斜めから)
アラスカ航空以外全滅,来年は空の便の信頼性の高いアラスカで開催しよう!

mini_140108_0941
私の発表の様子
———————————————————————————————————————————————

SIGMOD/PODS 2014(楠本 充)

2014年6月に開催された SIGMOD 2014 (Special Interest Group on Management of Data) のレポートを記したいと思います. SIGMOD はデータベース分野でトップに位置づけられる会議の1つです.SIGMOD では併設で PODS という理論系データベースの会議も同時開催されています.今年はアメリカ合衆国ユタ州のスノーバードというスキーリゾート地で開催されました.この時期は夏だったのでスキーはなかったのですが自然が雄大な場所でした.うろ覚えですが,会場付近を散策してシカに出くわしたと聞いたような記憶があります.

統計情報
Research track では 107 本の論文発表がありました.投稿数は 418 本で,採択率は 25% でした.2014年の SIGMOD では論文の投稿が2つの時期 (first submission, second submission) で可能になっており,投稿数はそれぞれで 98 件,321 件だったようです.採択プロセスでは,投稿された論文が直接採択されることは少なく,良さそうな論文でもひとまずは “Revise-and-resubmit” という通知をして,査読者からの要求を反映した後に再投稿するように促すようです.Revise-and-resubmit になったあとは7~8割の論文が結果的に採択されているようです.来年は投稿の時期を2回から3回に増やすかもしれないといったことが話されていました. 採択数を国別で見ると,USA が 56 件で最多で,その次に中国で 11 件でした.日本からは 3 本の論文が採択されました.また,分野には何かと流行りがあると思うのですが,投稿数を分野別で見ると,”Query processing & optimization” への投稿が80件で最も多く,次に”Graph management, RDF, social networks” が70件弱で多かったようです.

雰囲気について
SIGMOD は産業界からの注目が高く,多くの有名企業がスポンサーに付いていました.会場ではスポンサーブースがいくつも立っており,グッズを配ったり,中にはリサーチャーの募集をしている企業も見られました.研究に関しては,データマイニングのような分野からデータベースのシステムに関するものまで,幅広い分野の研究があると思いました. 一方で少し陰りが見えたのが PODS です. PODS は理論系データベース会議の中でトップに位置する国際会議なのですが,初日のビジネスミーティングでは,会議の規模が年々縮小していることが危惧されていました. このことを受けてか,来年以降は会議の扱う分野の範囲を拡大することが決定されたようです.

写真はスノーバードの雄大な自然と,SIGMOD プログラミングコンテストの東大チーム H_minor_free の紹介プレゼンの様子です.

001 000

———————————————————————————————————————————————

WWW2014(秋葉 拓哉)

基本情報
2014 年 4 月 7 日から 11 日にかけて開催された WWW 2014 (23rd International World Wide Web Conference) についてご報告いたします.WWW はその名の通りワールドワイドウェブに関するトップ学会で,比較的新しいものの最近ではかなりの人気を誇る学会だと思います.WWW の最近の人気は,例えば Microsoft Academic Search の学会ランキングで伺うことができます.最近 5 年に限定すると,コンピュータ科学の全分野合わせても 2 位,最近 10 年にしても 3 位ということで,かなり順位が高いです.そして,その分もちろん競争も激しくなっています. 最初の2 日間はワークショップとチュートリアルで,会議本体は 4 月 9 日から開始という形でした.開催地はソウルの COEX と呼ばれる大規模なコンベンションセンターでした.韓国の方から聞いたことによると,COEX は韓国内で大変有名な場所だそうです.

統計情報
研究発表は,Research Trackの口頭発表が84件,ポスター発表が107件,Web Science Track の口頭発表が20件,ポスター発表は15件でした.その他,3件の招待講演,13件のチュートリアル講演,19件のワークショップがありました.ワークショップでは合計128件の口頭発表と25件の招待講演があったそうです.WWWの競争の激しさは,Research Trackでの論文採否状況から伺うことができます.今年度は650件の論文の提出があり,84件が採択となったため,採択率は12.9% です.特に,日本からは24件の提出があったものの,口頭発表での採択は僕らの論文1件のみでした.他,ポスター発表での採択が日本から3件,Web Science Track での採択は日本から1件ありました.

雰囲気・感想など
産業界からの注目が極めて高い様子で,数多くの有名なウェブ企業がスポンサーについており,会場ではスポンサーブースがいくつも立っていました.スポンサーブースを訪れるとグッズが貰える事が多いので,ひと通りまわってグッズを揃えました. 研究に関しましては,WWWはとても幅広い話題を扱うという認識をより深めました.特に,すぐに役立つような手法の提案も多く並ぶ中で,実験的あるいは理論的な解析結果のみをメインとするような研究も少なからず採択されており,単純に話題の幅が広いのみならず,多様な価値観が認められていると感じました.

AkibaWWW2
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

———————————————————————————————————————————————
VLDB(前原 貴憲)

VLDB (International Conference on Very Large Data Bases)はデータベース分野における主要会議です.第40回となる今年は,9月1日から5日にかけて,中国の杭州で行われます.

全部で165件採択されており,国内からの採択は3本(リサーチトラック×2,デモトラック×1)でした.全体の投稿数等はまだ公開されていませんが,例年採択率20%弱で安定しているようです.本プロジェクトからは1本の論文がリサーチトラックに採択されました.

– Takanori Maehara, Takuya Akiba, Yoichi Iwata, and Ken-ichi
Kawarabayashi: Computing Personalized PageRank Quickly by Exploiting
Graph Structures.

全プログラムは http://vldb.org/2014/program/lib/FullProgram.html から見られます.

会議の内容はデータベースの基盤技術が中心です.グラフデータの処理は特に注目されているようで,全32セッション中最多の4セッションが割り当てられています(Graph Data I~IV).去年は2セッションだったので,今まさにホットな分野といえます.

広告